遺言執行|行方不明の相続人を捜索し遺言執行を行ったケース
状況
A(男性)さんは、東京で一人暮らしを長くしてきた方でしたが、晩年は故郷へ戻り、山梨県内の入所施設で亡くなりました。
Aさんの生前は、山梨に住む実の姉B妹Cに支えられていたようで、その方たちに向けて「Bに〇〇万円、Cに〇〇万円を支払い、その残りは世話になった施設へ遺贈する。」という内容の公正証書遺言が遺されていました。また、その遺言執行者は入所施設の施設長さんになっていました。
その一方で、入所施設側はAさんに生き別れた息子がいるような情報も聞いていました。
司法書士の提案&お手伝い
公正証書遺言は、そのまま遺言執行することもできますが、もしAさんに相続人が居た場合には、遺留分侵害している遺言なので減殺請求を受けることも考えられます。受贈者である入所施設側は、法人として一旦施設会計へ入金された寄付金を遺留分減殺請求によって返金するような事態は回避したいとの意向を示されました。
そこで、司法書士として亡Aさんの相続人調査をして、Aさんは約50年前、数年間だけ結婚し、長男Dが産まれてすぐに離婚していることが判りました。戸籍から見るに亡Aさんが生まれたばかりの長男Dと一緒に暮らした期間はほとんどなさそうでした。
戸籍記録からDの住所地(山梨県外)を探し出し、遺言執行者から相続人であるDへ遺産目録を提出するため「連絡欲しい」旨の手紙を郵送しましたが、長期不在で戻って来てしまいました。Dの捜索は大変難航しました。
やむなく司法書士がDの住所地へ調査に出向き、Dは不在ながら、間違いなくそこに居住していることが判り、置き書きを残しました。ほどなくDから司法書士あてに連絡があり、遺言執行者から説明する機会を設けることができました。
そこで司法書士が遺言執行事務をサポートし、遺言執行者から相続人Dへ公正証書遺言の提示とともに、亡Aさんの遺産目録を提出しました。
相続人Dは「私の息子(つまり亡Aの孫)が来月結婚することになっている。その祝いに亡Aの形見として金〇万円が欲しい。」との申出(遺留分減殺請求)がありました。司法書士として、その要求を「遺留分減殺請求のすべてとする」旨の文書を作成し、Dから署名捺印を受けました。
結果
Dの申し出は遺留分減殺請求とはいいながら、遺留分額上限より少額であり、かつ、受遺者である施設との円満な話し合いの中で行われました。施設側は、Dの求める額について、亡Aの姉B妹Cに按分負担させようとせず、自ら全部負担してDへ支払いました。
これによって、将来的に遺留分減殺請求を受けるかもしれないという不安定な状況から脱し、安心して亡Aからの遺贈を受け取り、会計へ納入しました。
遺言執行サポートの料金について
サービス内容 | 費用 |
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遺言執行サポート | 遺産評価総額の1.0% |
※ 遺産額に関わらず、報酬は最低30万円からとなります。
※ 遺言書保管料:10,000円/年(当方を遺言執行者に指定頂いている場合は無料です。)。
※ 諸証明発行等の実費は別途かかります。